2012/06/30

宝生紫雪 百五十回忌 紫雪忌


我が家に伝わる シテ方宝生流十五代宗家
宝生彌五郎友于(紫雪)師の「鉢木」画掛け軸です。



毎年七月第一日曜の金沢能楽会定例能のあと、同師の眠る金沢市東山の全性寺(ぜんしょうじ)で、法要が開催されています。
今年は百五十回忌に当たります。

私は今年は、残念ながら東京にて舞台があるため参加できませんが・・・




毎年九月の第一日曜日は金沢能楽会別会能が行われます。
今年は宝生紫雪百五十回忌追善能として、二部制にて開催されます。
能「安宅」「道成寺」他、豪華な演目がいっぱいです。
別会能当日、ロビーにてこの軸も展示されるようです。

チラシが手元に届き次第、UPしたいと思います。




最後?の牛レバ刺し


昨日は近所のお好み焼き屋(実は焼肉が絶品!)で、牛レバ刺しを堪能。
今月いっぱいで牛レバーの生を、お店側が出す事ができなくなるので、しっかり頂いてきました。これが最後かと思うと、本当に淋しいですね。
身はしっかりしてて、臭みもなく見事でした。

勿論このまま終わるわけはなく、焼肉(特上タン塩、和牛五種盛り)もしっかり食べてきました。








2012/06/20

2012/6/19 武田同門会「安達原」

昨日は観世能楽堂にて武田同門会「安達原(あだちがはら)」のワキを勤めてまいりました。

観世流以外の四流は「黒塚」と言います。

とても上演回数の多い曲ですが、地方や学生能で上演される場合は一部を省略する事が多いので、昨日のように全曲をやるのは久しぶりでした。
リハビリですね(笑)

その中のクセ(一曲の主題的な重要部分)の部分は、物語の進行にはあまり関係しないことが多いので、時間を短縮する時は省略が多いです。

しかしながら「黒塚(安達原)」のクセは、人間の苦悩を訴える重要な部分ですので、ご紹介したいと思います。

あらすじもUPしましたので、「安達原」をご覧になったことのない方は、まずそちらからどうぞ。



ただこれ地水火風の、仮に暫くもまとはりて、生死に輪廻し、五道六道に廻る事、ただ一心の迷いなり。凡そ人間の、徒なる事を案ずるに、人更に若き事なし。終には老となるものを、かほど儚き夢の世を、などや厭はざる我ながら、徒なる心こそ、恨みてもかひなかりけれ。

(現代語訳)
ただ地・水・火・風という四つの元素が、たまたま一時的に結びついては命を生み、また死ぬことを繰り返すのです。その生命がいつまでも成仏できずに、天上・人間・地獄・餓鬼・畜生の五つの世界や、修羅を加えた六道を巡るというのは、心一つの迷いによるのです。そもそも人間社会の無常を思うに、人はいつまでも若いままでいられることは絶対になく、結局は老いの苦しみを迎えることになります。それなのに、これほど儚い(はかない)夢のような世の中を、なぜお厭いにならないのか。(山伏様から生きているからこそ成仏できるのですよと教えられますと)我ながらこの世間に執着する愚かな心こそが恨めしい。こんな心で自分のつたない人生を恨んでも甲斐のないことでしたよ。




「ただこれ~迷いなり」の話者はワキ(山伏)で、後半の話者はシテ(女)になります。

この能の前半で、女が枠桛輪(わくかせわ・糸繰り車)で糸を紡ぎながら苦しい日常を訴えます。この糸繰り車は、輪廻する人の生を象徴し、長く辛い人生、人間として生きることの苦しみを表しています。



皆様はこの能をご覧になると、いくつか疑問点が生じてくることと思います。私も然りです。

女は本心から山伏に憐れんで宿を貸したのか?
親切心で暖をとるため裏山へ薪を取りに行ったのか?
初めから取り殺すつもりだったのか?
山伏に閨(ねや・寝室)を見られなければ何事もなかったのか?


能では何もはっきりとは言いません。我々演者は演者なりに考えて演じ、観客は観客なりに何かを感じる。

人間の本性が主題となるため、演者の人生経験や客個人の人生経験によって様々な能になり、これが能の魅力と言えるでしょう。

なんとなく鬼女が可哀そうに思えてきます。







黒塚(安達原)

紀州熊野の山伏祐慶一行が、諸国行脚の途中、奥州安達原に着き、一軒家に宿を乞います。女主人は、一度は断りますが、是非にといわれ招き入れます。
山伏が見馴れぬ枠かせ輪に興味を持つので、女は糸尽しの唄を謡いながら糸を繰る様を見せます。
夜更けに、女はもてなしの焚火をするために、山へ木を取りに行きますが、その際、帰るまで閨(ねや)の内を見るなと言い置きます。あまりにくどくど閨の内を見てはならぬと言って出かけたのを、かえって不審に思った能力が、山伏の目を盗んで閨をのぞいてしまいます。そこには人の死骸が山と積んであり、一行は驚いて逃げ出します。山からの帰り道、のぞかれたことを知った女は本性を現し、鬼女となって、約束を破ったことを恨み、襲いかかります。
山伏の必死の祈りに、鬼女は祈りふせられ、恨みの声を残して消え失せます。

「さしも隠しし閨のうちを、あさまになされまいらせし、恨み申しに来たりたり」
本曲は、「道成寺」「葵上」と共に(三鬼女)と呼ばれています。
人間の宿業の悲しさを描いた傑作といわれ、鬼女となるのは、約束を破られたことへの失望と怒りのよるものです。人は皆、孤独の秘密を持つものであり、またその秘密をのぞき見たいというのも人間の持つ本性です。そういった人間の本性を巧みに描いています。

2012/06/18

Stevie Wonder / Talking Book





このCD(LP)について書く理由は、私がStevie WonderのLPの中で、この「Talking Book」がBestだと思ってるからではありません。


私が中学時代から洋楽を聴くようになって、ポップス、ロック、ブルース、フォーク、カントリー、ソウル、ファンク、ジャズ等、幅広く聴ける耳を作ってくれたミュージシャンの一人がStevie Wonderで、R&B系として最初に聴いた曲が「Superstition」でした。クラシックだけ聴かないみたいですが、藝大音楽学部時代の影響でしょうか、時々、特に海外で聴きますし、オペラは現地のオペラッタで観ます。


名作の多いStevieの作品群からBest 1を決めるのは至難の業です。


私が洋楽を聴くようになったのは、中学1年の最後の頃、友達の間で話題になっていたラジオ番組「All Japan Pops 20」のおかげです。
AM文化放送系だったでしょうか、みのもんた氏が進行役をつとめ、毎週末に放送。それを必ずラジカセに録音し、ランクをノートに書き留めるという熱の入れ様でした。
この番組は、邦楽以外の全ジャンルを洋楽とみなし(当たり前か?)、レコードの売り上げ、ラジオへのリクエスト数等を集計し、1位から20位までランクを付けて曲を流すという、我々洋楽初心者には打ってつけの番組でした。

気に入ったシングルから、そのアーティストのLPを聴いていく、その繰り返しでした。


「Talking Book」では「Superstition」の他に、「You Are The Sunshine Of My Life」というまったく違うタイプで、ポップスとも言える曲が大ヒットしました。この曲趣の幅広さに驚き、どんどん洋楽にのめり込んで行ったのを思い出します。


能でも音感、リズム感は大切です。


上のYoutubeの映像、ロックファンならば解ると思いますが、この二大スターの競演。
最高ですね!

NO MUSIC, NO LIFE。



2012/06/17

2012年7月の主な出演スケジュール

1日(日)水上輝和演能会景清宝生能楽堂16:30~
4日(水)国立定例公演氷室国立能楽堂13:00~
7日(土)豊嶋三千春 能の会飛雲 ★国立能楽堂13:00~
8日(日)九皐会六浦矢来能楽堂13:00~
14日(土)観能の夕べ
特別公演忠信石川県立能楽堂18:30~
15日(日)轍(わだち)の会竹生島国立能楽堂14:00~
16日(月)よこはま能の会三輪横浜能楽堂14:00~
18日(水)研究会楊貴妃観世能楽堂17:30~
20日(金)納涼能邯鄲 ★宝生能楽堂14:30~
21日(土)興福寺勧進能 Ⅱ部春日龍神 ★国立能楽堂16:30~
22日(日)蒼昌会屋島観世能楽堂昼間
24日(火)下平克宏演能の会鞍馬天狗高崎市文化会館18:00~
26日(木)研能会花筐観世能楽堂17:00~
★ はワキツレ

2012/06/11

2012/6/16  高林白牛口二 喜寿記念 涌泉能


喜多流 高林白牛口二(こうじ)師の喜寿記念能。

呻二(しんじ)氏は子息、昌司氏は孫に当たられます。

白牛口二師は三老女と言われ最高秘曲の一つ

「伯母捨(おばすて)」を披かれます。

私はこの会にお邪魔致しませんが、お孫さんの「猩々」のワキに、私の次男進也がお邪魔します。

「伯母捨」のあとですから、ワキとしてはシテの登場の前を、元気いっぱい明るく演技しなくてはいけません。進也の「猩々」は初めてではありませんが、前回はお素人会。今回は訳が違います。無事に勤めてくれることを祈ります。



私の父保輔(やすすけ)は生前、国立能楽堂に2,3回出演させていただいておりますが、その内の1回は高林師の「蟻通」でした。もう30年以上前でしょうか。私もワキツレで出ておりましたので、よく覚えております。
大変個性的でありながら、実は蟻通明神である老社人とはこんな人だったんだと皆を納得させる、存在感のあるおシテでした。


今回の「伯母捨」も勉強させていただきます。




2012/06/08

Bob Welch Dead



元FLEETWOOD MACのギタリスト、Bob Welch が亡くなりました。

健康状態を苦にして、自らの頭を銃で・・・

Bob WelchはFleetwood Mac が Lindsey Buckingham と Stevie Nicks を入れて大ブレークする前のギタリストでした。

僕がリアルタイムで聴いたのは大ブレーク後なので、Welch時代のMacは後追いでしたが、英のブルースロックバンドだったMacが、米国人のWelchを入れて、新しいポップ路線を切り拓く基盤を築いた5作{Future Games ~ Heroes Are Hard To Find(クリスタルの謎)}への貢献は見事でした。

Mac脱退後は Palis というグループを結成するも成功せず、ソロ転向後ブレイクします。1977年の 「French Kiss」はよく聴きました。ギターもさることながら、作曲やアレンジのセンスが抜群でした。


中学、高校、大学時代、その後も色々聴いてきたミュージシャンが亡くなるNewsを最近よく耳にします。
今年になってもう何人を見送ったことか・・・


青春時代のモザイク画が一枚一枚剥がれ落ちてゆくようで、本当に寂しいです。




2012/06/06

鰯組からお葉書

先日ブログでご紹介した金沢の「鰯組」の大将の東さんからお葉書を頂戴しました。
とっても可愛くて粋なので紹介させていただきます。



もちろん毎回戴けるわけではないと思いますが、大将のお仕事同様、客を大事にする心使いが嬉しいです。お人柄ですね。



ちなみに是は初めてお店に行った後いただいた葉書です。
これもいい感じでしょう!
 Will feel good too!


2012/06/02

金沢百万石まつり~百万石薪能

今日6月2日(土)は第61回金沢百万石まつりのメインである百万石行列が行われました。

金沢百万石まつりは、加賀藩祖・前田利家公が天正11(1583)年6月14日、金沢城に入城し、金沢の礎を築いた偉業をしのんで開催されています。6月14日の日付は尾山神社誌に基づきます。
 尾山神社での封国祭に合わせて、大正12年から昭和20年まで金沢市祭として行われてきた奉祝行事がルーツで、終戦後は進駐軍の指導により昭和21年から6年間、尾山まつりとして尾山神社奉賛会によって開催されました。
 現在の金沢百万石まつりは、昭和27年に金沢市と金沢商工会議所が中心となって開催した商工まつりが第1回目となります。その後、豪華絢爛な百万石行列をはじめ、400年にわたり受け継がれてきた金沢ならではの伝統ある行事が賑やかに繰り広げられる現在の姿に発展しました。
 昭和59年(第33回)に初めて、百万石行列の主役である利家役に俳優を起用して以降、全国に発信できる初夏の一大イベントに成長しました。


今年の利家公は俳優の川野太郎さん、お松の方は女優の横山めぐみさんです。



行列は利家公が金沢城に入場され、現在の三の丸広場にて、行列の各役が演技を披露し、最後に利家公の鬨の声で終了となります。

利家公とお松の方だけは後の薪能の舞台に上がります。草鞋(わらじ)のままなのは、ちょっと困惑しますが・・・(笑)

午後7時から2日の最後を飾る、百万石薪能
狂言「苞山伏(つとやまぶし)」能「半蔀(はしとみ)」
です。


私も薪能で百万石まつりに参加させていただき有難く思います。
お客様も利家公金沢城入城行列の後、夜の篝火のもと、幻想的で幽玄な世界を楽しんでいただけたことと存じます。

皆様お疲れさまでした。

2012/06/01

紅入厚板 ① 牡丹折枝

ワキ方は男役しかありません。装束として一番初めに付けるものを概して着付と言います。
着付の種類にも、無地熨斗目(むじのしめ)、段熨斗目(だんのしめ)、格子厚板(こうしあついた)、色入厚板(いろいりあついた)、色無厚板(いろなしあついた)等、多種あります。


今回は色入厚板の第一回目として「牡丹折枝(ぼたんおりえだ)」をご紹介しましょう。

この厚板は能「安宅」のワキ、富樫が直垂上下(ひたたれじょうげ)の中に着るもので、通常は富樫の役以外には着ません。

能楽の世界で、装束の「色」というと、紅色をさします。
厚板の色の中に紅色が入っているものを「色入り」、入ってないものを「色無し」と言います。

牡丹折枝とは、牡丹の花を葉の付いた枝の部分から折ったという意味です。


紅入りの鱗(うろこ)模様と稲妻地紋の上に何色もの牡丹折枝を刺繍したものを互い違いに織り合わせてあります。





流儀の決まりの柄(がら)ですので、他役、他流の方は作ることができません。我々もこれを作った時は、装束屋さんに型止めをお願いしております。もし下掛宝生流以外の人が着てるのを見かけたら教えて下さい。流儀として抗議をし、回収します(笑)。

柄としても強いですし、舞台映えする厚板です。