吉野天人 あらすじ
毎春花見にほうぼうを訪ねる都の者が、今春は吉野の桜を見ようと、仲間たちを連れて出かけます。
吉野山に着き、見事な桜景色に惹かれ、さらに奥深く入っていこうとすると、そこへ女性が一人現れ、一行に話しかけます。
高貴そうな女性が一人山中にいることを不思議に思った男が女性に尋ねると、女性は「私はこの辺りに住む者で、一日中花を友として暮らしているのです」
と答え、都人と共に花を眺めます。
ところが女性はいつまでも帰ろうとしません。いよいよ不思議な女性だと思って尋ねると、女性は「実は私は天人で、花の面白さに心引かれて、ここに来たのです。このままここに滞在して、よく御信心なさったならば、古の五節の舞(ごせつのまい)をお見せしましょう。暫くお待ちください」と言って、姿を消します。
やがて夜になり、何処からともなく音楽が聞こえ、辺りにはなんとも言えない良い香りが漂ってきます。
するとそこへ天人が現われ、桜の花に戯れ、舞を舞いますが、花の雲に乗って何処かへ消え去っていくのでした。