2014/03/21

鉢木

シテ    佐野常世
シテツレ 常世の妻
前ワキ  旅の僧
後ワキ  最明寺時頼
ワキツレ 侍臣(二階堂)
オモアイ 下人
アドアイ  早打


あらすじ
 全国を行脚する僧(ワキ 実は最明寺時頼)は、信濃にいたが、雪が深くなったため、鎌倉に行き、春になってから又修行の旅に出ようと佐野に到着した。

すると小降りになっていた雪が、また激しく降り出したので、宿を求めることにして、ある家に声をかける。しかし主人が留守のため、僧は軒先で待つ。

しばらくすると家の主人(シテ 佐野常世)が帰宅し、一旦は宿を断る。

山本の里を目指した僧の姿を追い、常世は家に案内する。
 こうして僧は常世の家に一泊することとなった。

妻は「何もありませんが、粟飯を召し上がってください」と僧に勧める。
僧は「邯鄲(かんたん)」の盧生(ろせい)の「一睡の夢」を思い出しながらいただく。

常世は僧の暖のために、秘蔵の梅、桜、松の盆栽(鉢木)を切って薪にしてもてなす。

僧が感謝して主人の名を聞くと、佐野源左衛門常世で、一族の者に横領されて、このように落ちぶれた生活をしている。
主である最明寺殿でさえ修行に出られているが(勿論僧が最明寺であることは知るはずもない)、いかに落ちぶれたとはいえ、いざ鎌倉という時は、ここにある武具、長刀、あそこに痩せてはいるが馬もいるから、一番に馳せ参じます、と僧に言う。

こうして僧は名残を惜しみながら、一宿の礼を残して鎌倉へ帰ったのだった。

中入り

鎌倉である。
いざ戦(いくさ)という事で、全国の兵に出兵命令が出た。

最明寺時頼は侍臣(二階堂)に「軍勢の中に、ぼろぼろの武具を着て、錆びた長刀を持ち、痩せた馬に乗った武者が一騎あるはずだから、連れてまいれ」と命じる。

下人(アイ)が見つけられて、常世は御前に出ると、呼び出した殿は、いつぞやの大雪の晩、常世の家に泊まった僧であった。

その時に常世が言った「いざ鎌倉の時は、一番に馳せ参じる」というのが真かと召集したのだ、と最明寺は言い、その通りであった常世に本来の土地などを返したうえ、雪の夜にもてなされた鉢の木にちなんで、加賀の梅田、越中の桜井、上野(こうずけ)の松井田の三つの庄を与えたのだった。


固い「忠誠心」「主を思う従者」の物語である。
「いざ鎌倉」の言葉は、本曲が出典らしい。


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