2013/05/27

2013/5/26 篁宝会「江口」



昨日は石川県金沢市在住の能楽師 藪俊彦師が御自分の古稀記念と銘打って催された 第60回 篁宝会
私は能「江口」のワキで出演させていただきました。
藪師は北陸の宝生流の能ファンならば知らない方はいらっしゃらないかと思いますが、地元で大変熱心に能楽の普及に努めていらっしゃいます。舞台の上では鬘物は言うに及ばず、魅力的な能を舞われる大先輩です。
私も子供の頃よりお世話になっておりますが、見た目は還暦を少し過ぎた感じにしかどう見ても見えず、お話ししても若々しいし、フットワークの軽い行動力には感心します。
誠におめでとうございます。
今後も益々お元気に活動される事を祈念いたします。
「江口」の解説等は、またの機会に書かせていただきますが、
今回のこの「江口」は、師のお祝いの会の中で、ちょっと特別なものでした。
金沢で長年能の道にいそしまれた河原悠娜(ゆうな・本名は幸子)氏の三回忌に、長女の木戸玲子さんがおシテ、長男の清氏が小鼓、悠娜氏のご主人の登喜治氏が地謡に出られました。
時間の都合上、ワキの道行等、おシテと関わらないところの省略はありましたが、1時間半を超える大曲です。
舞台上の演者は勿論、客席の皆様も、あの存在感の大きかった悠娜氏を懐かしんだ素敵な能となりました。
おシテの玲子さんは、私の姉の中学時代の同級生で、私も勿論覚えてはおりましたが、久しぶりにお目にかかってもすぐ分かるくらい少女時代の可憐さを今も持っておられる素敵な方でした。
あの難しい「江口」の詞章を一句も間違えず、足の運び、面使いも大変美しく華麗に舞われ、つくづく感心致しました。
申し合わせの時にも感じましたが、あの綺麗なお声、立ち居などは幸子さんかと錯覚するほどです。
特に前シテの場面でワキと掛け合いをしながら橋掛かりを歩み、「とめ参らせぬも理りならずや」と常座でワキに向くまでの歩みの確かさ。
プロでも難しい運びの配りを、迷う事なく堂々とこなされ、まさにお稽古のたまものです。
「江口」のキリのところで、地謡に出ておられたご主人の目からは涙がこぼれ出てこられたようで、度々お目を擦ってらっしゃる姿を拝見して、もらい泣きしそうでした。私も感じたくらいですから、ご主人には御嬢さんの姿が亡き奥様に見えたのでしょう。
ご長男の清氏は小鼓のプロとしても御活躍ですし、末の弟の進氏も
仕舞「田村」を舞われました。進氏は私の中学の1年先輩で、バスケ部の時には随分可愛がってもらいました。
進先輩! 仕舞かっこよかったですよ!
悠娜氏の葬儀には参列できませんでしたが、この「江口」のワキを勤めさせていただき、僅かながらもお手向けができた気がしております。
悠娜氏を再び普賢菩薩に高められたご家族の御繁栄を心からお祈り申し上げます。






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