2012/09/30

今日は3か所

今日は久々に3か所を回りました。
1日に3か所で本番の舞台があるのは、年に一回あるかないかです。



朝、家を出る時はまだ台風の気配も薄く、先ずは水道橋へ。

宝生流田崎師社中の宝隆会で「鶴亀」。
おシテの天門様のしっかりした楽には感心致しました。また子方の鶴と亀の舞姿のなんと可愛い事!


次は矢来能楽堂へ伺い、奥川師社中の華友会「吉野天人 半能」。
天人揃(てんにんぞろい)の小書付き。
玄人でもしっかり型を合わせるのは難しい演出ですので、お素人に挑戦させる奥川氏のご苦労は如何程であったかと思います。


次男進也がワキツレでお邪魔しました。
かなり緊張していたようですが、無事勤めることができました。
一番緊張してたのは、実は父親の私かもしれません(笑)
進也はワキツレなどの役をこなすのは勿論ですが、楽屋での装束付けやその他いろんな事を、これからどんどん覚えていってもらわなければなりません。ビシビシいきます。



最後はセルリアンタワー能楽堂定期能~観世流にて「半蔀」。
おシテは関根知孝師。もちろん玄人能です。
お素人能2番の後でしたので、気を引き締めて勤めました。
台風が来ていることはまったく感じないくらいの、素敵で緊張感のある舞台でした。


セルリアンタワーの中にいると外の気配はまったくしないのですが、外に出るとやっぱり、かなりの雨風でした。
お客様の無事の帰宅をお祈りいたします。

今日は仲秋の名月、はて見れますかな。

多少疲れましたが、充実した1日でした。

 



 

2012/09/20

2012年10月の主な出演スケジュール

 

2日(火) エグゼクティブ・サミット 羽衣 セルリアンタワー 14:00~
2012 能楽堂
4日(木) 修善寺能 松風 修善寺温泉 17:30~
あさば旅館
6日(土) 青葉の会 山姥 銕仙会能楽研修所 14:30~
7日(日) 観世別会 鷺 ★ 観世能楽堂 11:00~
10日(水) 大山薪能 安達原 大山阿夫利神社 16:00~
13日(土) 鵜沢久の会 当麻 宝生能楽堂 14:00~
14日(日) 観世九皐会 浮舟 矢来能楽堂 13:00~
宝生会月並能 鉄輪 宝生能楽堂 12:00~
17日(水) 研究会 千手 観世能楽堂 17:30~
20日(土) 五雲会 花筐 宝生能楽堂 12:00~
21日(日) 海の会 頼政 セルリアンタワー 11:00~
能楽堂
能を知る会 東京公演 船弁慶 国立能楽堂
23日(火) 笛吹薪能 楊貴妃 山梨県 笛吹市 19:00~
スコレーセンター
27日(土) 花影会 土蜘蛛 観世能楽堂 12:30~
28日(日) 喜多流自主公演能 巻絹 喜多能楽堂 12:00~
★ ワキツレ



 

2012/09/19

カーリュー・リバー

能「隅田川」とオペラ「カーリュー・リバー」の根本的な違いが何か所かあります。能の場合は子供の霊はお墓の中に消え、母と子の感情や関係は、お客様の解釈に任せていますが、オペラの場合は、子は神のご加護で天に召され、言わばハッピー・エンドで終わります。
「カーリュー・リバー」では、修道院長という重要な登場人物がひとり増えます。したがって始まりと終りに修道院長が歌う場面があります。

しかしその他は場面の進行など、驚くほど同じです。

今回の子供の霊
可愛いでしょ! 


カーリュー・リヴァーの説明を ウィキペディアから転載させていただきます。




教会上演用寓話『カーリュー・リヴァー』(Curlew River — A Parable for Church Performance作品71は、ベンジャミン・ブリテン作曲の教会上演用オペラ

この作品は、ブリテンが1956年日本を訪れた際に鑑賞した日本の能楽作品『隅田川』を基にしている。ブリテンはこの作品に能のもつ劇的な要素ばかりでなく、演劇における能の取り扱いまでをも取り込んでいる。
脚本はウィリアム・プルーマー。彼は原作の物語をキリスト教寓話に置き換え、舞台をイースト・アングリアフェンズにある架空の川カーリュー川とした。この作品の動作の中心は狂女、すなわち部外者である。この部外者を主役とするテーマは、『ピーター・グライムズ』、『ビリー・バッド』、『オーウェン・ウィングレイヴ』などブリテンの劇作品の多くに見られるものである。
『カーリュー・リヴァー』はブリテンの後半生における作曲活動の方向性を定め、後の『オーウェン・ウィングレイヴ』や『ベニスに死す』、および弦楽四重奏曲第3番といった作品への道を開いた。

本作は1964年6月13日イングランドサフォーク州のオーフォード教会でEnglish Opera Group(ブリテンが組織したオペラ団)によって初演が行われた。出演者はピーター・ピアーズ(狂女役)、ブライアン・ドレイク(旅人役)など。楽器演奏者の中には、パーカッショニストのジェイムズ・ブレイズが参加していた。この初演の舞台監督はコリン・グレアムであった。
物語は、の形式に従って男性のみが演じる4名の主要人物:修道院長(バス、語り手の役割を果たす)、狂女(テノール)、渡し守(バリトン)および旅人(バリトン)によって語られる。コーラスは、8人の巡礼者(テノール3名、バリトン3名、バス2名)によって行われる。



あらすじ
『カーリュー・リヴァー』は、他の2作の教会上演用寓話と同じく、出演者全員が行列を成して賛美歌「Te lucis ante terminum」(光の消ゆる前に)を斉唱しながら舞台へ向かい、配置につくというところから開幕する。オルガンの合図と共に、語り手の役割を務める修道院長がこれから披露される「神秘」について紹介を行う。続いてゆっくりと衣装を纏わせる儀式—荘厳な器楽伴奏が添えられる—が行われ、その後演劇が開始される。 狂女と旅人は、渡し守の舟に乗ってカーリュー川を渡ろうとしている。短い自己紹介の後、狂女は自分の探求の旅について語る:彼女は、1年前に姿を消した子供を捜しているのである。渡し守は狂女を舟に乗せることを嫌がるが、他の人々が彼女を哀れみ、彼女を舟に乗せるよう渡し守を説得する。渡し守が狂女と旅人を乗せて川を渡る途中、彼はある少年のことを話す。その少年は1年前、ブラック・マウンテンズ(ここは狂女の故郷である)の近くにある家から残酷な主人によって誘拐され、この場所にやってきた。少年は病気であり、主人によって川のほとりに置き去りにされた。少年は地元の人々に保護されたものの、やがて息を引き取った。渡し守は少年の言葉を述べる:

僕は死にかかっているのが分かる…僕をここに、この修道院へ続く道のそばに埋葬してください。そうすれば、僕の故郷からやって来た旅人がこの道を通るとき、その人達の影が僕のお墓にかかり、僕の思い出としてイチイの木を植えてくれるでしょう。

川沿いに住む人々が信じていることは、少年の墓が神聖なものであり、





…何か素晴らしい恩寵がそこにあり、体と心の病を癒す


ということである。
渡し守が物語を語るにつれ、死んだ少年が狂女の子であることが明らかになってくる。その事を知って悲嘆にくれながら、彼女は少年の墓に祈りを捧げている人々の中に加わる。全ての人々が賛美歌を歌う絶頂の時に、少年の声(ボーイソプラノ)が彼らの間に響き渡るように聞こえてくる。そして少年の霊が、母親をなぐさめるために墓石の上に姿を現す:

安心して行ってください、お母さん。死者は再び起き上がり、その祝福された日に、僕たちは天国で会えるでしょう。



この時、狂女は癒され、その狂気は消え去る。ブリテンはこの瞬間を、狂女が喜びに満ちた装飾的な「アーメン」の言葉を漏らすという形で描写し、最後を出演者全員による長く後を引く斉唱—帰還と受容のしるし—で締めくくっている。
ここで、最初と同じ衣装を纏わせる儀式の音楽が再び流され、出演者達は再び普段着を身につける。修道院長は箴言を繰り返し、聴衆に別れの挨拶を述べる。そして、出演者全員が劇の開始時と同じ単旋聖歌を口ずさみながら退場する。




歌手達には、平信徒の兄弟に扮した小規模な演奏家のグループが付き添う。この作品で用いられる楽器は以下の通りである:





珍しいことには、この作品には指揮者がいない:その代わりに、楽器奏者たちは自分たちで音頭をとることになり、スコアには各所で音頭をとるべき楽器が記されている。指揮者をもたないことは、ブリテンに全体のテンポをとる手間を省かせることを可能にした。奏者たちはしばしば代わりに2つあるいはそれ以上の別々のグループ、別々のテンポで演奏する。これは能楽の上演における能囃子の演奏に類似したものである。これが、もう一つの独特な表記法「カーリュー・サイン」をもたらす。この表記法は、以前に分かれた奏者のグループを「再び同期化させる」ために、片方のグループに、もう片方のグループの演奏が追いつくまで「アドリブ」で曲の一部を伸ばしたり繰り返したりするよう指示する方法である。ハープのパートはのための音楽に強く影響を受けている。またオルガンのパートは大規模なトーン・クラスターの使用が特徴で、これは雅楽で用いられるに由来するものである(ブリテンは日本滞在中の1956年2月に二週間がかりでこの楽器の演奏を習った)。

『カーリュー・リヴァー』におけるブリテンの重要な作曲技術としてはヘテロフォニーがあり、これを彼は並外れた劇的演出のために用いた。この技術は作品中の楽曲全ての様相に行き渡っており、メロディの短く装飾的な結合、あるいは長く非同期的な積み重ねから引き出された響きを生み出している。冒頭の単旋聖歌「光の消ゆる前に」が、寓話全体の音楽の形態の多くを指し示していることも指摘しておくに値する。
ブリテンの他の劇作品の多くと同じく、個々の楽器が特別な登場人物を象徴するために用いられている。『カーリュー・リヴァー』においては、フルートとホルンが特にはっきりとこの目的に使われており、それぞれ狂女と渡し守を表している。小規模なオーケストラ編成であるために、ブリテンはこの作品では、『
戦争レクイエム』や『夏の夜の夢』で示されているような「音の世界」や、『ねじの回転』のクイントや『ベニスに死す』のタッジオが登場する場面で起こるようなオーケストラの音質の劇的な変化などは用いていない。
 

2012/09/15

暑かった~

イギリスから帰国して、今日で4日目。

相変わらずの日本の暑さに、身体が少しまいってます。

ロンドンも例年よりは暖かかったとはいえ、高くても25℃程度。

帰国後の忙しさをこなすにはキツイです。

今日は矢来能楽堂で金春円満井(えんまい)会の「杜若(かきつばた)」。



シテとの掛け合いでワキ座あたりで立っている時、袖口から汗が舞台に落ちているのを、気付いたお客さまもいらっしゃったかもしれません。

実は舞台上はさほどでもなかったのですが、楽屋のクーラーが扇風機のように送風のみでまったく効かず、サウナ状態。楽屋での出番待ちの間に、装束の中は汗でズクズクでした。

ただでさえ暑がりの私にとっては地獄です(笑)

「杜若」のおシテのI.N氏も、かなり辛そうでした。

でも見所の空調は難しいですね。効かせすぎるとお客様には寒いでしょうし・・・

せめて楽屋の空調だけは早く直して下さいませ。


2012/09/12

イギリス公演 ⑤

9月10日 自由行動日

2公演無事終わり、今日は完全OFF。
6人で市内観光に行きました。

今日はこちらへ来て初めての曇り空。気温もだいぶ下がりました。
オリンピックでお馴染みの写真が続くかもしれませんが、よかったら覗いて下さいませ。

ロンドンはどこも道幅が狭く、二階建てバスが走るのも解ります。
Taxiよりも地下鉄の方が早いし、1回ぐらいは地下鉄にも乗ってみたいので、ホテル近くのOld Street駅から地下鉄でWestminster駅へ。
ここからスタートです。
ちなみにロンドンでは、地下鉄のことを「Underground」と言い、「Subway」は
歩行者用地下道路を言います。

狭くてバスみたい!
ラッシュが大変そうです。
大江戸線みたい 
国会議事堂&Big Ben


ウエストミンスター寺院

横から



シェイクスピア・グローブ座


テート・モダン

ミレニアム・ブリッジ
テート・モダン側からセント・ポール大聖堂を望む



パラリンピック・パレード直前
凄い人だかりです!

道路も閉鎖中

バッキンガム宮殿やThe Mallもパレードで閉鎖です。
まあ仕方ない。これも一つの記念です(笑)



Bank駅近くのパブで昼食


席が非常に狭い!
英国人は昼間ここで商談もするそうです。
地元のプロモーターの方推薦の店だけに味も最高でした。

お決まりのタワー・ブリッジ



上に上がりました


下りの階段

対岸から
この角度は珍しいでしょ。

要塞、宮殿、銀行、動物園、処刑場と数奇な運命をたどってきた
歴史的建造物。
現在は王室所有の宮殿で、世界文化遺産




ざっと見て回るだけの観光でしたが、仕方ないです。
もしまた来ることがあれば、次回はゆっくり見たいですね。
一旦ホテルに帰り、6時からメンバー3人で夕食へ。
ロンドンに来たら一回は Fish&Chips を食べなさいと皆が言うので、良いところを教えてもらってGo!


苦手なグリーンピースが入ってても美味しかったです!

ヒラメ(ボイル)

たら(Chips)

エイ?(Chips)

2012/09/11

イギリス公演 ④

9月9日 オーフォード公演

朝10時にイプスイッチのホテルを出発。
日本人は集合時間をきっちり守るが、助っ人の外国人チームの中から、必ず遅刻者が出ます(笑)

約1時間でOrford(オーフォード)に到着。

今日の会場の Ct Bartholomew’s  Church 
(セント・バーソロミュー教会)

カーリュー・リバーが初演された所での公演、記念すべきことです。











教会の祭壇がトランク置き場。なんか申し訳ないです。
中にトイレがないので、装束を付ける前が少し不便です。
到着後すぐに場当たりをして、すぐ近くにある

オーフォード・キャッスルへ。






最上まで上がるのは本番前なので止めました。
お城の入り口が少し上がったところにあるのですが、そこからの景色でも十分回りが見渡せます。素晴らしい景色でした。

昼食は能チーム全員で近くの燻製のメニューを食べさせてくれるレストランへ。

Leek & Potato soup 
薫製の魚の盛り合わせ

レストランの奥に薫製屋さんがありました。



昼食後に宇多田ヒカルさんとお話しすることが出来ました。
信じてもらえないかもしれませんが、1対1で、2~3分立ち話をしました。
彼女はロンドン公演を観て、とても感動されたらしく、もう一度観たいということで、車でわざわざオーフォードまで来てくれました。
僕のことも「あの~船の方ですよね?」と話してくれて、飛び上がるくらい嬉しかったです(笑)。

ロンドンの後、ご自分のインターネットで能のことを調べたらしく、「隅田川」に使う面も「深井でしたっけ?」と言われてビックリです。
こういう方が能に興味を持ったと、ブログ等に発信していただければ、能の宣伝にもなりますので、発信のお願いをしておきました。
2ショットの写真も撮らせてもらったのですが、彼女との約束で、残念ですがブログに載せることはできません。


3時に隅田川が開演。
狭い教会なので、200人も入れば満席というところ、ほぼ満員だったように思います。
教会のつくりがとても古く、天井に木材が使われているので、音の吸収がロンドンの時よりかなりいい感じでした。

とにかく晴天に恵まれ、気持ちよくできました。
会場と装束付けをする人以外の人の着がえるホテルが離れているので、スタッフも雨が降ったらどうしようと心配していたようです。


隅田川終演後、カーテンコールに備えて紋付に着がえ、カーリュー・リバーを地謡座の後ろの方から、全員で観劇。

イギリスの作曲家ブリテンが50年以上前、日本に滞在中、「隅田川」を観て深く感動して、帰国後カリュー・リバーを作ったというだけあって、進行は隅田川とほとんど同じなんですね。楽器もなんとなく能の囃子を手本に、最小限の楽器のみ使われています。

ただ違うところは、修道院長役などの登場人物が若干増えるのと、子供が天に召されていくのを見て、母親は安心するという、言わばハピーエンドになるくらいでしょうか。

少し演出が現代風で、お客様の大半がお年寄りだったのですが、始めは若干戸惑って観ていらっしゃる気がしました。


全公演終了後、オペラチームと能チームがいっしょに写真撮影。
その後宇多田さんが能の楽屋へ挨拶に来られて、団長達とお話しをされた後、いっしょに記念撮影をしました。



ロンドンへ帰る道のりは、始め順調でしたが、市内に入る手前の所が大渋滞。結局3時間半以上かかったでしょうか。ホテル着が11時前。
かなりきつい一日でした。

今日はパラリンピック閉会式の日。メインスタジアムの花火の音が聞こえました。